本研究では、金属ー有機化合物前駆体を設計・合成し、その加水分解・重合によるチタン酸鉛微粒子ー有機ハイブリッド材料の合成と評価を目的とする。9年度は、前駆体の設計を検討し、鉛ー有機化合物の配位子としてメタクリル基、チタンー有機化合物の配位子としてイソプロポキシ基を選択する事により、チタン酸鉛ー有機ハイブリッド前駆体を合成することができた。また、その加水分解・重合により、チタン酸鉛微結晶粒子が有機マトリックス中に生成することが明らかとなった。 10年度は、その生成物評価のために、電気的および光学的性質を測定、検討した。ハイブリッドの誘電率は加水分解条件に依存し、加水分解に用いる水の量の増加とともに増加し、約10当量の加水分解により、一定値を示した。ハイブリッドの電気粘性を測定したところ、電場の印加により粘度の上昇がみられ、電気粘性効果が観察された。光学顕微鏡観察により、電場の印加によるフィブリル構造の生成が観察され、ナノ微結晶チタン酸鉛粒子を含むハイブリッドが電場に対して配列し、これが電気粘性効果の原因となっていることを明らかにした。また、ハイブリッド膜化して透過スペクトルを測定したところ、吸収端の低波長側へのシフトが観察され、ハイブリッド膜はナノサイズ粒子による量子サイズ効果を示すことが明らかとなった。
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