研究概要 |
廃棄処理問題に関して有害性が指摘されている酸化鉛(PbO)を含まない環境にやさしい無鉛圧電セラミックスの実用化に貢献できる圧電材料開発の一貫として、チタン酸ビスマスナトリウム(BiI/2NaI/2)TiO_3[BNT]系各種固溶体組成からなる強誘電体セラミックスの物理的および電気的諸特性を詳細に調査し、圧電諸特性に及ぼす固溶体や添加物の効果を考察することによって、圧電性と置換イオンとの関係を系統的に調べることを,目的とした。 次に示すチタン酸ビスマスナトリウム(Bi1/2Na1/2)TiO_3[BNT]3成分系固溶体強誘電体(Bil/2Nal/2)TiO_3-KNbO3-1/2(Bi_2O_3・Sc_2O_3)[KTNS] (Bil/2Nal/2)TiO_3-BaTiO_3-BiFeO3[BNBTF]のセラミックス試料をそれぞれ通常のセラミックス焼成技術により作製した。得られたセラミックス試料の物理的および電気的諸特性を詳細に調べた結果、次のことがわがった。 KTNS系では、BNT近傍組成の結晶系は菱面晶のべロブスカイト構造単一相で、菱面晶から斜方晶への相境界(MPB)は観察されなかった。キュリー温度Tcは、BNTに対してl/2(Bi2O3・Sc2O3)の固溶量が増加すると高温側にシフトし、KNbO_3の固溶量が増加すると低温側にシフトした。抗電界Ecは、1/2(Bi_2O_3・Sc_2O_3)が増加すると上昇し、KNbO_3が増加すると低下する傾向がみられ、Tcの結果と相関がみられた。また、縦結合の電気機械結合係数k_<33>は、組成に応じて、0.42〜0.47を示した。一方、BNBTF系では共振周波数温度係数が低減した。このように、BNT系セラミックスは、縦結合の圧電性が横結合よりも大きく、従来のPZT系に比べて誘電率が比較的小さいなどの特長を有し、環境にやさしい無鉛圧電セラミックスとしての有力な候補になると考えられる。
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