一定濃度で流れているNO_2ガスに対してITOをガスセンサーとして用いる場合、スパッタ法に比べ電子シャワー法による膜は感度特性が優れていた。これは、基板表面に沿ってVLS(気・液・固)ひげ結晶が電子シャワーでは成長するため、荒れた表面が得られたためである。従来、基板に垂直に成長するひげ結晶は多く観察されているが、基板上を這って成長するひげ結晶は非常に少ないため、その成長機構を明らかにした。ひげ結晶の先端液相が、成長初期に基板表面に形成された微小Sn合金液滴を取り込みながら成長するため、基板に沿って成長した。微小Sn合金液滴がなくなると物質は直接蒸気から取り込まれるため、基板に垂直にひげ結晶は成長した。つまり、物質の優先的な取り込みサイトが面内方向か垂直方向かで成長形態が変わった。 このガスセンサーをZnO光触媒膜によるNO_2ガス分解のモニタリングに使った。NO_2ガスの分解速度が遅いため、ガスの流れを止め容器に密閉する必要があった。この場合、スパッタ膜の方が優れていた。それでも多くのセンサーにおいて、漏れがないのにも関わらずNO_2濃度が減少するため、センサーとして使えなかった。特にセンサー温度が高いときや高濃度において顕著であった。しかし、測定を繰り返すと漏れ現象はなくなり、センサーとして使えるようになった。この様な現象は、NO_2吸着サイトには安定サイトと不安定サイトがあると考えることにより説明することが出来た。センサーの面積が小さ過ぎると漏れ現象が現れ、大きすぎると一定値に達する時間(応答速度)が長くかかった。センサー面積を適度に選べば、あるNO_2濃度に対して漏れ現象がなく応答速度も速いセンサーを得ることが出来ることが分かった。 適度な熱処理とセンサー面積を選ぶことにより、ITOガスセンサーを光触媒の基礎研究に使えることを可能にした。
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