1. 目的 アルカリ金属ゲルマニウム酸塩ガラスはゲルマニウム酸塩異常と呼ばれる特異な挙動を示す。音速と弾性的性質が構造変化に敏感な物理量であることに着目してこの異常現象をアルカリ金属ホウ酸塩ガラスのホウ酸塩異常と対比させて解明する。また、ガラス転移に伴う熱容量の変化と弾性定数との相関を解明する。 2. 実験 (1)ガラス作製:アルカリ金属水酸化物と水溶性の石英型二酸化ゲルマニウムを湿式反応させて化学的に均質な粉末を調製し、この粉末を熔融して超音波伝播特性が優れたガラスを作製した。(2)組成分析:電位差滴定法により、アルカリ金属酸化物は逆滴定法で定量し、二酸化ゲルマニウムは強酸性のゲルマニウム-マンニット錯体に変換して定量した。(3)ガラス転移の測定:今回科研費で購入した示差走査熱量計によりガラス転移温度とガラス転移に伴う熱容量の変化を測定した。(4)密度測定:予めガラス転移温度で熱処理を行なったガラスの密度を液中秤量法で測定した。(5)超音波測定:パルスエコー重畳法により縦波音速と横波音速を共振周波数が10MHzの水晶振動子を使用して測定した。 3. 結果と考察 組成式xM_2O・(1-x)GeO_2で表わされるアルカリ金属ゲルマニウム酸塩ガラスの音速と弾性定数はx=0.15〜0.20の組成で極大を示した。またガラス転移に伴う熱容量の変化もx=0.15〜0.20の組成で極大を示した。このことより音速と弾性定数はガラス形成液体のフラジリティーと相関の有ることが判明した。一方、(1)リチウムホウ酸塩ガラスの音速は単調に増大した。(2)ナトリウム及びカリウムホウ酸塩ガラスの音速は単一の極大値を示した。(3)ルビジウム及びセシウムホウ酸塩ガラスの音速は3個の極値(極大・極小・極大)を示した。ゲルマニウム酸塩ガラスとホウ酸塩ガラスの挙動の違いは中距離秩序も考慮する必要があると考えられる。
|