研究概要 |
1.ドーパントによる可溶化 ポリピロール(PPy)は各種の溶媒に対して極めて難溶解性であることが知られている。我々は重合の際ポリマー中にドーパントが取り込まれることに着目し、その構造に溶媒と親和性の高い置換基を導入することによりPPyの溶解性の向上を検討した。ドーパントとしては種々の鎖長のオリゴオキシエチレン鎖を有するスルホン酸類を用いた。スルホン酸類はオリゴオキシエチレングリコールモノメチルエーテルとプロバンスルトンとの反応により合成した。これらのドーパントによるPPyの溶解性への影響を調べるため、基礎的な評価として電解重合時の通電荷量に対するポリマー電析重量の変化を測定した。PPyの電解重合はピロール+スルホン酸塩水溶液中で金を作用極としてO.8V(vs.Ag/AgCl)定電位により行った。電極上へのPPy電析重量はin situ電気化学水晶振動子マイクロバランス法により測定した。ドーパントのオリゴオキシエチレン鎖が重合度n=12以下ではいずれも通電荷量にほぼ比例してPPy電析重量が増加した。ドーパントのオキシエチレン鎖が長くなるにつれて、パルク溶液中に溶解する割合が増加する傾向が認められた。 2.分子量制御による可溶化 重合に際してモノマーに対して少量のパラ置換アニリン類を重合停止剤として共存させることにより、従来よりも平均分子量の小さいポリアニリン(PAn)を合成した。重合停止剤としてp-トルイジンを0.1-0.5mol%添加した場合、得られたPPyの数平均分子量は約6,000(ポリスチレン換算)であり、N-メチルピロリドンに対して高い溶解性を示した(250mg/ml)。この溶液をキャストすることによりアルミ固体電解コンデンサを作製し、インピーダンス-周波数特性を調べた。その結果、従来のポリアニリンを用いたものよりもESRが低く、優れた特性を示した。
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