本研究ではカーボンブラック表面へグラフトした結晶性高分子と、それとは性質の異なる結晶性高分子との相互貫入網目(IPN)法による、新規なカーボンブラックナノ複合体の合成を試み、以下の結果が得られた。 1.カーボンブラック表面へ導入したカルボキシル基と水酸基、あるいはアミノ基末端の結晶性ポリエチレンイミン(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びポリエチレンアジペ-ト(PEA)との直接縮合反応により、粒子表面へ対応する結晶性ポリマーがグラフトできることを明らかにした。 2.この様な反応系では、ポリマーの分子量が大きくなるほどグラフト率は大きくなるが、グラフト鎖の数は減少することを見出した。また、このグラフト反応系では粒子表面のグラフト鎖の分子量や数を制御できることが分かった。 3.PEI、PCL、及びPEAをグラフトしたカーボンブラックと酸化処理して低分子量化したポリエチレンとを溶液中で混合し、トリイソシナナ-トで相互架橋することにより、IPN型の結晶性ポリマー/カーボンブラックナノ複合体を合成することに成功した。さらに、この様にして得られた結晶性ポリマー/ナノ複合体の機械特性や製膜性に及ぼす、グラフト鎖の分子構造、分子量、及びグラフト鎖の数についても検討した。 4.この様な複合体の抵抗値はアルコール蒸発や水蒸気中で増大する傾向を示した。これは、これらの結晶性ポリマーが溶媒蒸気を吸収することにより結晶性が変化し、カーボンブラック粒子相互の導電回路が変化するためと推察した。しかしながら応答速度や、抵抗値の増加幅は小さかった。したがって、この様な蒸気応答性の感度改善が今後の課題である。
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