超高分子量ポリエチレンをデカリンから結晶化させゲル状にした後に、それをミキサ-で粉砕し、ポリエチレン微結晶の懸濁液を作製した。その懸濁液中に赤木法(赤木助教授によって開発された方法)によってポリアセチレンを重合させ両高分子の均一に混じった混合体を作製することが本研究の目的の一つであって、これには成功した。溶媒としてクメンを用いた場合、またポリプロピレンの系についてもポリアセチレンとの混合体を作製することができた。得られた混合体はゲル状になっているので、これを粉砕し、ろ過によって溶媒を除いた後で圧縮成型してシートに加工した。このようにして、ポリアセチレンと他のポリオレフィンとの均一混合体の作製方法は確立した。 得られたシートを超延伸し、それの赤外線吸収スペクトルによって、ポリアセチレンが延伸物のなかで延伸されていることは確認されたが、X線回折法、電子顕微鏡観察による延伸混合体の微細構造の詳細な構造の研究は現在進行中である。 ポリアセチレンの重合には危険を伴い、真空ラインなどの特殊な設備の整ったところで、経験のある慎重な実験操作を必要とし、このため筑波大学でアセチレンの重合を行わざる得ないので、試料の作製が思うに任せず、現時点では公表にいたるまでの構造、物性についての纏まったデータが得られていない。
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