レーザーアブレーション法により、最大50μm厚さまでのNd-Fe基薄膜を作製した。試料表面は、滑らかな平滑面と共に、異常成長したと考えられる液滴状粒子が観察された。この液滴粒子はFe基薄膜では観察されず、希土類基薄膜特有の現象と考えられる。Nd基薄膜の試料のX線回折図形は非晶質に起因するブロードなハローパターンとα-Nd結晶ビークの混相となった。α-Ndの結晶ビークは、薄膜表面の異常成長粒子の除去に伴い消滅した。VSMにより磁気測定を行った結果、例えば、25μm厚さのNd-Fe合金は、0.11Tの飽和磁化、13.5kA/mの保磁力を示し、同じ試料厚さのリボン状試料の値と比較して、保磁力の値が増加する特徴を有している。また、298Kで作製した薄膜は、Nd-Fe二元系および高Nd濃度Nd-Fe-B薄膜では非晶質と結晶相の混相が得られ、それ以外の薄膜では非晶質相が得られた。これらの合金は、保磁力が最大で2kA/mの軟磁性を示した。加熱条件で薄膜を作製した場合、硬質磁性がNd-Fe二元系および高Nd濃度Nd-Fe-B薄膜で発現したが、それ以外の合金では認められなかった。この中で、873Kで作製した高Nd濃度Nd-Fe-B薄膜は保磁力の急激な増加を示し、その試料は1.256MA/mまでの印荷磁場で飽和しない。この保磁力の増加は、アーク溶解法で作製した合金が室温で保磁力300kA/mの硬質磁性を示した後、熱処理により同様の更なる保磁力の増加が生じる現象と異なっている。この差異は、気相蒸着による急冷効果により、薄膜試料に構造的緩和が生じていないことが、室温で作製した薄膜の軟磁性の発現に寄与しているためと考えられる。本研究により、レーザーアブレイション法により作製した合金薄膜は、非晶質単相では硬質磁性を示さず、ナノ結晶化と非晶質の混相状態で硬質磁性を示すことが明らかになった。
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