研究概要 |
片状黒鉛晶出型および球状黒鉛晶出型についてすべり摩耗試験を行った結果,いずれも高クロム白鋳鉄系のロール材よりも優れた耐すべり摩耗性を示し,とくに球状黒鉛晶出型の方が優れることがわかった.そこで,今年度は球状黒鉛晶出型クロム白鋳鉄に注目し,各構成相の割合とすべり摩耗との関係を調べるため,4種類の試料を作成した.そしてFCD600を比較材として,すべり摩耗における荷重依存性について調べることを目的とした.摩耗試験はピンオンディスク型の摩擦摩耗試験機である.摩擦距離:500m,摩擦速度:0.5m/sとし,荷重を5kg〜30kgまで変化させた.摩耗量は3本の試験片の合計の質量減少量とした.すべり摩耗の場合,質量減少量に対してすべり速度と荷重は同様な挙動を示すとされている.したがって,荷重を増加すると見掛けの質量減少量も増加することになる.すべり距離500m後の質量減少量を単位荷重あたりの値で整理した結果,いずれも場合も低荷重側にピークを有する摩耗曲線となっている.なお,比較材のFCD600は荷重20kg以上では試験片が完全に摩耗してしまい計測不能になった.各試料の荷重と摩擦係数との関係ではいずれも荷重の増加とともに摩擦係数は減少する.炭化物量の多い試料に比べて黒鉛量が多い試料およびFCD600の方が,摩擦係数が少なくなる傾向がある.摩耗量と摩擦係数の間にははっきりした関係は見られないが,黒鉛量および炭化物量が多い場合に耐すべり摩耗性が優れることがわかった.したがって,すべり摩耗特性は黒鉛の晶出量が多くしかも炭化物の体積率が大きいほど優れ,しかも摩耗量の荷重依存性も小さいことがわかった.
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