研究概要 |
鉄鋼材料の変態挙動を“in-site(その場)"観察することが可能な「高性能・高温光学顕微鏡」を開発した。とくに申請者らはγ⇔α変態挙動を調べるため、これまで論文報告がない100〜300℃/secの速い冷却速度を得る工夫、そして、この速い変態挙動を記録する高温顕微鏡を構築し、いくつかの貴重なデータを得た。概略は以下のとおりである。 (1) 試料の寸法は3mmφ×2mmtであり、温度計測はの試料表面、あるいは側面にPt-Rh熱電対をスポットウェルドにて溶接する。冷却ガスは、これまでの高純度Arガスから高純度Heガスに変えた。 (2) 昇温時のα→γ変態挙動は汎用ビデオ(30フレーム/秒)で記録する。冷却時のγ→α変態は、平成9年度に購入したハイスピードビデオシステム(200フレーム/秒、約3.8秒間記録)を用いて記録した。 (3) 実験の効率化を図るため、(1)加熱ステージ電源のoff、(2)試料にHe冷却ガスを流出、(3)冷却速度をモニタする。などを自動化した。 (4) 高速記録は順調であったが、高純度Heガスを用いた場合でも1,000℃付近では高温酸化が問題になり、きれいな画像が得られなかった。平成10年度は主として「ターボ分子ポンプ」を購入し、真空雰囲気にて、あらためて実験を開始した。 本年度は、新しく開発した高性能・高温光学顕微鏡を用いて実験を行った。申請者らは極低炭素鋼の場合、α結晶粒径は冷却速度に依存しないことを報告してきたが、理由は不明であった。そこで上記の高性能・高温光学顕微鏡を用いて実験を行った結果、γ→α変態時においてα結晶粒は、γ結晶粒界を横切るようにして成長する様子が観察できた。α粒の粗粒化原因のひとつは、このような機構が寄与しているものと考えられる。
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