研究概要 |
本研究では、軽量かつ高容量な電池になる可能性を秘め、次世代EV等へ応用可能と考えられるMg_2Niプロチウム吸蔵合金に注目した。しかし、Mg_2Ni合金はプロチウム吸・脱蔵温度が高く、またプロチウム吸蔵速度が遅いため、急速充電に対応できない。これらの欠点は、水素化物が安定であることに起因する。そこで、Mg_2Ni水素化物を不安定化させるため、第三元素による置換を試みるとともに、Mg_2Ni相への第三元素の固溶量の増加と組織の均質化を目的として、急冷凝固およびメカニカルグラインディング(MG)を行った。得られた試料のミクロ組織観察を行い、プロチウム吸蔵特性を測定した。その方法として、水素雰囲気中での昇温中に吸蔵されるプロチウム量,250℃での圧力-組成等温曲線(P-C-T曲線)および吸蔵速度曲線を求めた。急冷凝固およびMGにより比較的均質で微細な組織が得られ、MGにより粒径約1mumの微粉末試料が得られた。活性化前の状態ではMg_2Ni_<0.9>Fe_<0.1>合金MG材が最も低い温度でプロチウムを吸蔵し始め、また、活性化後には各試料とも室温付近で吸蔵し始めた。これは、MGあるいは活性化による新規表面の生成および反応面積の増大に起因すると考えられる。P-C-T曲線の測定結果から、各試料のMg_2Ni相のプラトー圧力は、吸脱蔵時ともにほぼ一定値を示した。最大吸蔵量はMg_2Ni_<0.9>Fe_<0.1>合金急冷凝固材が最も多く、また各処理材毎にNi-rich Mg_2Ni合金と比較すると、Mg_2Ni_<0.9>Fe_<0.1>合金の方が吸蔵量が多くなった。Mg_2Ni_<0.9>Fe_<0.1>合金急冷凝固材はプロチウム吸蔵速度も最も速い。これは、Feによる置換効果と、急冷凝固による組織の微細化効果が現れたものと考えられる。以上の結果から、急冷凝固あるいはMGとFeの置換は、プロチウム吸蔵特性の改善に有効であると考えられる。
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