研究概要 |
本研究ではMg_2Ni合金の吸・脱蔵温度の低下および吸蔵速度の向上を目的として、第三元素による置換を試みた。第三元素としては、Mg_2NiH_4化合物の生成エンタルピーの絶対値を減少させると予想されるMn,Fe,Co,Cu,Al,ZnおよびAgを選択した。溶製した合金の組織の均質化を図るため、急冷凝固およびメカニカルグラインディング(MG)を施した。得られた試料のミクロ組織観察を行い、プロチウム吸・脱蔵特性を評価した。プロチウム吸蔵特性としては、水素雰囲気中において室温から300℃までの昇温中に吸蔵されるプロチウム量および吸蔵開始温度、250℃におけるプロチウム吸蔵速度曲線を求めた。プロチウム放出特性は、TG/DTA装置を用いて、アルゴン雰囲気中において室温から400℃までの昇温中に放出されるプロチウム量、放出開始温度および活性化エネルギーを求めた。得られた結果を要約すると以下のようになる。 1. 活性化後の各試料は、プロチウム吸蔵時の格子ひずみの増大に伴った亀裂の進展による新規表面の生成およびそれに伴う反応面積の増大により室温付近からプロチウムを吸蔵し始め、その吸蔵量も増加する。 2. プロチウム吸蔵速度は急冷凝固材が最も速い。特に、Mg_2Ni_<0.9>Fe_<0.1>合金およびMg_2Ni_<0.9>Co_<0.1>合金が最も速い吸蔵速度を示す。これは、FeおよびCo置換効果と急冷凝固による組織の微細化のためと考えられる。 3. 水素化後のアルゴン雰囲気中での放置時間の増加に伴い、水素化物が高温相から低温相へと構造変態し、放出温度は低下し、放出量は増加する。同様な現象は、水素化後の試料を破砕した場合にも見られる。 4. 3d遷移金属の置換により脱水素化反応の活性化エネルギーおよび水素化物の生成エンタルピーが減少する。 以上の結果から、3d遷移金属の置換と急冷凝固およびMGは、プロチウム吸・脱蔵特性の改善に有効であると考えられる。
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