研究課題/領域番号 |
09650758
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 進 名古屋大学, 情報文化学部, 教授 (10023293)
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研究分担者 |
中野 裕司 名古屋大学, 情報文化学部, 助教授 (40198164)
石政 勉 名古屋大学, 工学部, 助教授 (10135270)
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キーワード | 準結晶 / 正20面体相 / フェイゾン / 歪 / 歪緩和 / 磁化率 |
研究概要 |
昨年度、Al-Pd-Mn系F型正20面体相準結晶の磁化率を測定し、準結晶に特有なフェイゾン歪の緩和の理論が予想している、緩和初期に時間の平方根に従う変化を見い出した。 また、Al-Pd-Mn系F型正20面体相準結晶においては、Mn原子のなかの一部の原子のみで局在磁気モーメントが発生し、その発生の条件はMn原子の置かれた環境に敏感に依存することが分かった。これらのことから本年度は、Al-Pd-Mn系正20面体相準結晶とその関連近似結晶の原子配列の解析を行った。この解析から、正20面体相準結晶を構成すると考えられる原子群とそのなかのMn原子の位置が決定され、またフェイゾン歪が関係した新しい構造が見い出された。これらの原子配列の解析のための温度を変えたX線回折のデータを、本補助金によって購入したX線試料高温加熱装置を用いて得た。昨年度に引き続いて、正20面体相準結晶に圧力を加えたときの巨視的な歪の時間変化を測定する実験も進めているが、必要な安定度が十分に得られていない。現在測定系の改良を進めている。 正20面体相準結晶における磁性原子の位置と巨視的な磁性の関連をさらに詳細に調べるために、昨年度の研究によって磁性原子のHoの位置のモデルがわかったZn-Mg-Ho準結晶について、Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida型のHo間距離に対して振動的な相互作用を仮定して低温における磁気秩序状態に関するシミュレーション計算を行った。Ho原子間の最短の距離が反強磁性的相互作用、2番目の距離が強磁性的相互作用の場合、反強磁性的な長距離磁気秩序が実現することがはじめて見い出され、また相互作用の符号を反転させた場合は長距離磁気秩序が実現しないことがわかった。このシミュレーション結果は、フェイゾン歪が正20面体相準結晶の磁性に大きな変化を与えることを強く示唆している。
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