研究概要 |
Fe_3Alをベースとした擬二元合金(Fe_<1-x>M_<>)_3Alについて,各種の遷移金属Mで置換することによりB2構造に対するDo_3構造の安定性を制御し,さらに高温強度の向上を達成し得るかどうかを追究した結果,以下の知見が得られた. 1.(Fe_<1-x>M_<>)_3Alにおいて,M=Ti,V,Cr,MnおよびMoで置換するとDo_3相はより強く安定化した.なかでもM=Vの場合,格子定数は組成とともに減少しており,ホイスラ-型Fe_2VAl(x=0.33)において極小値となる.この格子の収縮はDo_3構造における置換原子のサイト選択に起因する.また,電子顕微鏡観察によれば,遷移金属置換にともなってDo_3ドメインが粗大化しており,規則度の上昇を示唆している. 2.電気抵抗の温度依存性において,Do_3-B2変態に対応して現れる抵抗異常よりDo_3相の安定限界温度を決定した.とくにM=Ti,V,Moで置換すると,Do_3-B2変態温度は組成とともに著しく上昇する.この変態温度の上昇は,置換原子のサイト選択による電子濃度効果に起因している. 3.ビッカース硬度試験により上記擬二元合金の硬度の温度変化を調べ,M=Ti,V,Moの場合に変態温度の上昇にともなって高温硬度も増加することを明らかにした.ただし,室温付近での硬度は,いずれの遷移金属で置換した場合にも二元合金よりは減少している. 4.ホイスラ-型Fe_2VAl合金では,2Kでの比抵抗が3000μΩcmにも達しており,半導体的な電気抵抗挙動の発現が初めて確認された.高分解能光電子分光によれば,フェルミ準位近傍にエネルギーギャップの存在は確認できず,むしろ金属的なバンド構造を有する.一方,低温比熱の測定によれば,熱的な有効質量が自由電子の20倍にもなっており,ヘビーフェルミオン状態を形成している可能性がある.
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