1)ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、p-ニトロアニリン、あるいはN-メチル-4-ニトロアニリンをPMMAの側鎖の一部にラベルしたPMMAのphysical agingによる特性変化を示差走査熱量計と誘電測定から調べた。それぞれの試料のガラス転移温度より5から20度低い温度でphysical agingを1から168時間行った。何れの試料も熱処理時間の増加に伴って、吸熱ピーク面積の増加およびピーク位置の高温シフトが起こった。また、熱処理温度がガラス転移温度に近い程早い緩和が観測されたが、平衡エンタルピーが最大となったのは、ガラス転移温度より10度低い温度で行った時であった。PEMAは50K付近にエチル基の内部回転による損失ピークが存在するが、これがphysical agingの影響を受け、緩和強度の減少することが示された。主鎖のトランスからゴ-シュへの変化で、エチル基の回転ポテンシャルエネルギーに大きな変化が生ずることも計算の結果から分かった。何れの試料にも共通して、側鎖緩和(β緩和)の緩和時間の長いところがphysical agingによって変化が現れた他、agingにより緻密化していた試料が、測定の昇温過程で平衡状態に至る間に起こる構造変化を誘電測定で初めてとらえた。 2)ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)共重合体(PET/PEN=90/10)を溶融圧縮後、氷水中に急冷してできたフィルムを5倍に自由幅一軸延伸した。緊張下でphysical agingすると、分子鎖の平行配向化が進むが、無緊張下では未延伸試料をphysical agingした状態に近づくことが分かった。低温での力学的性質との関連は次年度の課題である。
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