完全2次再結晶化させた焼結タングステン細線中のバブルを走査型電子顕微鏡により観察した。粒界上には平均で23nmの径のバブルが10^<13>m^<-2>の高密度で存在する一方で、粒内のバブルの面密度は粒界の約5%にしか過ぎなかった。また、2次再結晶粒の形態を定量化し、それらの変化が高温クリープにどのような影響を及ぼすかについて調べた。粒の形態を粒形状に関するパラメーターの1つf_1で代表させることにより定量的に表すことができた。そして、粒の最適なインターロック状態にある組織を「粒界面積の急激な増加を示さない最小のアスペクト比を有する粒の形態」と定義し、その状態f^0_1からのズレ指数ΔI(=f_1-f^0_1)によって高温クリープを特徴付けることができた。変形機構図中のベキ乗則クリープ領域は粒が最適にインターロックされている状態のΔI=0で最も狭く、それからズレるにつれて拡大した。そして、同領域の変形は粒界すべりによって強く影響を受け、ΔI>0ではΔIが増加するにつれてさらに粒界キャビテーションによる影響が加わると考えられた。 これらの研究成果については平成9〜10年度研究実績報告書の研究発表欄に示す論文にて公表した通りである。このように線材中に軸方向に並んで数多く存在するバブルは2次再結晶粒形状の制御という重要な役目を果たしており、高温での強度はバブルの分散状態こよって決定される粒の形態によって最も強く影響を受けることが分かった。従って、粒内のバブルによる変形応力への直接的な寄与、つまりバブルによる非熱成分的硬化は粒形態の変化のために隠されてしまうので、現在粒形態の寄与分の分離方法に付いて検討中である。
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