研究概要 |
本年度は,材料として装飾性建材に用いられるJIS-A1070材(AI:99.7%)およびJIS-A5052材(AI:96.0%,Mg:2.5%))を用い,以下の研究を行った. (1)分光光度計による装飾性の評価技術の検討I 光の反射には正反射と拡散反射および全反射がある.装飾合金の評価にはどの測定法が適切かを分光光度計を用いて測定したところ,正反射率(入射角5°)を比較すると,結晶に依存して1%以下のものから40%に達するものまで存在することが明らかになった. そこで,分光光度計に角度可変型の正反射付属装置を新たに取り付け,結晶表面での光の反射特性を評価する技術について検討した.純粋なアルミニウムの場合(100)面が現出しやすいと言われる塩酸と硝酸の混酸を用い,粗大化させた結晶表面をエッチングして,その光反射特性の特徴を結晶毎に調べた.その結果,大別して2種類のタイプに分類できることを見いだした.その一つは鏡面に近く,入射角を変えても概ね40〜60%の高い正反射率を示す結晶である.他の一つは高さ約2μmの波形の凹凸(トタン板状の凹凸)を有する結晶であり,主として凹凸の斜面で反射を起こす結晶である.この結晶では入射角を変化させても正反射率は数%以下である.来年度はこの結晶の光学特性と表面形態や結晶方位との関係を明らかにする. (2)再結晶による粗大化結晶の形状および結晶学的特徴に及ぼす合金組成および加工履歴の影響の解明. 厚さ2mm程度のアルミ板の結晶粒を効率よく粗大化させるには,熱処理温度は550℃以上必要であることが明らかになった.またMgを少量含むアルミ合金はより純度の高い1070材よりも複雑な光反射特性を示し,かつ結晶粒界がより明確であり装飾的には全く異なる様相を示すことが明らかになった.これは不純物によるエッチング面の形態の相違によるものであると推定される.
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