研究概要 |
本年度は銅系装飾用合金として用いられるCu-Al合金を試料とし,以下の研究を行った. (1)結晶粒の粗大化の条件を見いだすための研究. メダルなどの装飾品として用いられる厚さ4mm程度の銅アルミ合金(Cu-5%Al)の結晶粒を再結晶により効率よく粗大化させるには,熱処理温度は液相線直下の約1000℃が適当であることがわかった. (2)エッチングした結晶の表面形状と光反射特性および結晶方位の関連についての研究. 結晶方位はEBSP法を用いて測定した.銅アルミの(111)面が現出しやすい酢酸と硝酸の混酸を用い,粗大化させた結晶表面をエッチングし,その光反射特性の特徴を結晶毎に調べた結果,銅アルミ合金材の粗大結晶は大別して2種類のタイプに分類できることを見いだした.その一つは(A)鏡面に近く,高い正反射率を示す結晶である.この結晶は特定の方向に強く光を反射し,強い金属光沢を示す.他の一つは(B)四角柱形の鱗片状や粒子状の凹凸表面を有する結晶であり,試料表面で乱反射を起こす結晶である.この結晶はやや茶褐色に見える.これらの結晶の組み合わせにより輝くような視覚効果をもたらすものと考えられる.結晶方位との照合を行った結果,(A)タイプの結晶は(111)やそれに近い(221)あるいは(332)などの指数面である.一方(B)タイプの面は(mn0)で表される面,例えば(210)や(100)面およびそれらに近い高指数面であることが分かった. 官能試験を行った結果,銅アルミ系装飾合金は銅亜鉛系装飾合金と比べ輝きが強く感じられることが分かった.これは銅アルミ系合金に多く見られるツイン(双晶)のためであろうと推測されるが,本年度は十分に解明できなかった.
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