研究概要 |
本年度は銅系装飾用合金として用いられるCu-Zn合金およびCu-Al合金を試料とし,以下の研究を行った. (1)結晶面形態観察による装飾用Cu-Zn合金とCu-Al合金の比較. 官能試験を行った結果,銅アルミ系装飾合金は銅亜鉛系装飾合金と比べ,明度,彩度ともに高く,非常に明るく輝きが強く感じられることが分かった.これは銅亜鉛系合金の場合にはエッチング面の結晶方位による差異が銅アルミ系合金のそれに比べ明確ではなく,どの結晶面も類似した凹凸を示し,単にその方向が結晶によって異なること,また表面の凹凸が複雑で光反射の指向性が弱いことが原因であると推定される. (2)エッチングした結晶の表面形状と結晶方位の関係についての研究. 銅アルミの(111)面が現出しやすい酢酸と硝酸の混酸を用い,粗大化させた結晶表面をエッチングし,表面形態の特徴を結晶毎に調べた.そしてEBSP法を用いて測定した結晶方位との関係について詳細に検討した.光反射の指向性が高いストライプ状の凹凸を持つ結晶に着目し,ストライプの方向とEBSP法で測定した結晶方位との間の角度を測定し,他方,各結晶面と優先腐食面(111)との交線がストライプであるとの仮説を立てて結晶方位角との間の角度を計算し,上記の測定結果と比較した.その結果,明確なストライプ状のエッチング面では数度の誤差で計算結果と測定結果がほぼ一致した.やや波形の形状を有するストライプ面では計算結果と測定結果との誤差は10度以上となった.また(mn0)で表される面,例えば(210)や(100)面およびそれらに近い高指数面では階段状の細かな凹凸を有する面が多いことが分かったが,形状が複雑で計算による確認にまでは至らなかった.
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