研究概要 |
基板に直流バイアスを印加する前処理により,SiやSiC上に高配向のダイヤモンド膜が形成することが報告されているが,高々1cm角程度の面積にしか実現されていない.そこで,ダイヤモンド膜の実用化に向け,大面積に高配向膜を形成するプロセスの確立を目的とする。 通常のダイヤモンド堆積に用いられているマイクロ波プラズマは,マイクロ波矩形導波管に波長の半分以下の直径の石英管を直交させた形式であるため,堆積面積は高々数cm径以下である。そこで,大面積への堆積を実現するために,円筒導波管を空洞共振器としマイクロ波反射端を基板ホルダーとするエンドランチ型マイクロ波プラズマCVD装置を昨年度から設計・試作してきた。これにより,およそ4inch径までの大面積堆積が可能となる。この場合、4inch径のSi上へ堆積を行うためにはマイクロ波電力を効率的にプラズマへ注入すること,長時間形成のためには雰囲気の水素や炭化水素による温度制御機構のダメージを低減することなどのプロセス上の問題点が明らかとなった。 現在のところ,マイクロ波電源からプラズマ発生部への導波管経路を改善し1kW程度までの入力を実現可能とした。これにより,実際に堆積可能な面積が向上し2inch径程度までにダイヤモンドを形成することが可能となった。また,エピタキシャル形成のための基板バイアス印加の回路設計も行い,直流基板バイアスが印加可能となった。これにより,基板へのバイアス印加を確認しエピタキシャル成長が起こることを確認したが,エピタキシャル成長する面積についての改善は未だなされていない。今後,投入電力のプラズマ中での均一消費を可能とするマイクロ波モードの選別が今後重要であると思われる。
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