研究概要 |
熱処理型Al合金A6061-T6(1mm厚)および時効析出強化型Ni基超合金Inconel 718(3.2mm厚)を供試材料として用い,CO_2レーザー溶接を行った.また比較として,これらの材料のTIG溶接も行った.溶接ままでは,いずれの合金,溶接法においても溶接金属および溶接熱影響部(HAZ)で軟化が生じた.この軟化は,時効析出物(Al合金ではβ″相,Ni基超合金ではγ′,γ″相)の溶接熱によるマトリックスへの溶解に起因するものであった.TIG溶接では,さらにこれらの時効析出物の粗大化(過時効)による軟化も生じていた.レーザー溶接ではTIG溶接に比較して軟化域の幅は狭く,Al合金では約1/4,Ni基超合金では約1/7であった.溶接後に時効処理を行うと,レーザー溶接部ではいずれの合金においても,軟化域は時効析出物の再析出によって,ほぼ母材なみの硬さに回復したが,TIG溶接部ではHAZの過時効域において硬さが回復しなかった.その結果,引張試験では,レーザー溶接継手はほぼ母材なみの強度を示したが,TIG溶接継手は母材強度に及ばなかった.これらの結果から,熱源のエネルギー密度が高く,トータルの入熱量が小さいレーザー溶接は,従来のアーク溶接に比べて,時効析出強化型材料の溶接に有利であることが分かった. また,上記のような溶接部における時効析出物の溶解および粗大化にともなう硬さ変化の予測を行うための基礎的検討として,上記供試材料に最高加熱温度と加熱,冷却速度を変化させた熱サイクルを付与し,時効析出物の溶解および成長挙動の観察と硬さ変化の測定を行った。この結果に基づいて,これらの合金の時効析出物の熱サイクル過程における溶解の速度式を導出した.今後この速度式の溶接部への適用を検討する.
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