研究概要 |
本年度は8MeVのイオン注入装置を用いて、加速電圧を2.0MeV,2.3MeVおよび2.6MeVでヘリウムイオン注入したSUS316Lステンレス鋼をレーザー溶接した場合のヘリウムバブルの生成挙動とレーザー溶接条件との関係を調べた。そしてイオン注入された溶接部が再溶接された場合の溶接部におけるヘリウムバブルの生成挙動を検討したものである。得られた結果を要約すると次のようである。 1. まず加速電圧2.0MeVでドーズ量9.0×10^<18>atoms/m^2,2.3MeVで9.5×10^<18>atoms/m2および2.6MeVで1.0×10^<19>atoms/m^2で試料にヘリウムイオンを注入した(注入条件(B))。そして平成9年度で実施した5MeVおよび6MeVでのイオン注入した結果(注入条件(A))と比較検討した。試料におけるヘリウム原子の濃度はモンテカルロシミュレーションおよびガウス近似法を用いて計算した。その結果、イオン注入条件(B)の場合は試料表面下1.8μmから5.8μmにヘリウムはガウス分布している。レーザー溶接後の溶接金属中のヘリウム濃度は数値計算の結果、3appmから13appmであった。 2. イオン注入条件(B)の場合もレーザー出力が低い場合は溶接ビードと母材との界面すなわち溶接ボンド部の溶接金属側にヘリウムバブルが発生する。レーザー出力の増加につれて溶接金属量が多くなり、ヘリウム濃度が低下するため、ヘリウムバブルは小さくなる傾向であった。 3. 5MeVおよび6MeVでイオン注入し(注入条件(A))、レーザーによるビードオンプレート溶接した試料を用いて、さらに交差溶接を行った。その結果、初層と第二層の交差領域の溶接金属中においてもヘリウムバブルが観察され、溶接ボンド部で観察された粗大なヘリウムバブルの発生状況と現象的には同一であった。
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