研究概要 |
8MeVのイオン注入装置を用いて、ヘリウムイオン注入したSUS316Lステンレス鋼をYAGレーザー溶接した場合のヘリウムバブルの生成挙動を調べた。そしてイオン注入された溶接部が補修溶接により再溶接された場合の溶接部におけるヘリウムバブルの生成挙動を検討したものである。 1. 加速電圧5MeVでドーズ量1x10^<19>atoms/m^2および6MeVでドーズ量2.45x10^<19>atoms/m^2イオン注入した場合(注入条件(A))と2.OMeVでドーズ量9.0x10^<18>atoms/m^2,2.3MeVで9.5x10^<18>atoms/m^2および2.6MeVで1.0x10^<19>atoms/m^2で試料にヘリウムイオンを注入した場合(注入条件(B))におけるヘリウム濃度分布をモンテカルロシミュレーションおよびガウス近似法を用いて計算した。レーザー溶接後の溶接金属中のヘリウム濃度は数値計算の結果、いずれのヘリウム注入条件の場合も3appmから13appmの範囲であった。 2. イオン注入条件(A)および(B)いずれの場合もレーザー出力が低い場合は溶接ビードと母材との界面すなわち溶接ボンド部の溶接金属側に2μm以上の粗大なヘリウムバブルが発生する。レーザー出力の増加につれて溶接金属量が多くなり、ヘリウム濃度が低下するため、ヘリウムバブルは小さくなる傾向であった。 3. レーザー出力の増加は溶接金属中のヘリウム濃度を減少させるが、トウクラックの発生を生じさせる。また0.1μm以下の微細なヘリウムバブルがデンドライトセル境界に存在することを透過型電子顕微鏡により明らかにした。そしてイオン注入した試料(注入条件(A))を用いて補修溶接を行った結果、初層と第二層の交差領域の溶接金属中においてもヘリウムバブルが観察され、溶接ボンド部で観察された粗大なヘリウムバブルの発生状況と現象的には同一であった。
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