研究概要 |
(1) 西日本地区における腐食の実態調査では,他機関で実施した分析データを収集した。先ず,広島市衛生研究所環境科学部・山水敏明氏からは,広島市の酸性雨モニタリング調査データ集(昭和62年6月〜平成6年3月)と広島市の浮遊粒子物質・降下ばいじん量調査データ集(昭和59年度〜平成5年度)である。また,広島市工業技術センター第2研究室・山嵜勝弘氏からは,中国重慶市と広島市の共同研究(1995〜1998年)結果をまとめた防錆皮膜に及ぼす酸性雨の影響と防錆仕様の確立(第1報)及び防錆皮膜に及ぼす酸性雨の影響と防錆仕様の確立(第2報,屋外暴露試験と腐食生成物の分析),自然暴露試験試料の腐食原因の解析である。これらは,中国重慶市と広島市での暴露試料の腐食度を測定し,さらに表面生成物を解析したものである。 (2) 人工酸性雨による腐食試験では,鉄鋼の酸性雨腐食に及ぼすさびの光触媒効果について検討した。太陽光の代わりとして紫外線を照射し,照射しない場合と腐食量を比較した。平成10年度は短波長として波長265nm,平成11年度は長波長として波長365nmの光照射について検討した。人工酸性雨(pH3.0〜4.0)中での腐食試験(3,5,7日間)と電気化学測定試験(装置は平成9年度科学研究費で購入したものを使用)を行った。両試験とも,さびた試料に光照射した。さびた鉄では,紫外線照射により腐食は25〜30%促進された。これは腐食におけるさびの光触媒効果と考えられる。得られた結果を元に,鉄鋼の酸性雨腐食に及ぼすさびの光触媒効果の機構を提案した。本研究成果を第45回材料と環境討論会(1998年8月,金沢工業大学)に発表し,材料(日本材料学会論文誌)に論文投稿した。
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