研究概要 |
平成10年度の研究では,得られた結果を元に,鉄鋼の酸性雨腐食に及ぼすさびの光触媒効果の機構について提案した。そこで平成11年度の研究では,その機構をさらに明確にするために,さびの量を増やした鉄鋼試料を用いて,酸性雨腐食に及ぼすさびの光触媒効果について検討した。前年度同様,太陽光の代わりとして紫外線を照射し,照射しない場合と腐食量を比較した。照射に用いた光の波長は365nmである。人工酸性雨(pH3.0〜4.0)中での腐食試験と電気化学測定試験(装置は平成9年度科学研究費で購入したものを使用)を行った。腐食試験は,試料を3,5,7日間人工酸性雨中に浸漬しさびを生じさせ,その後同じ期間だけ紫外線照射したものとしなかったものの腐食量を測定した。さらにその腐食量から3,5,7日間人工酸性雨中に紫外線を照射せずに浸漬したときの腐食量を差引き,紫外線照射の影響を調査した。電気化学測定は,試料表面を腐食試験のときと同様に腐食した後,ポテンショスタットを用いて自然電位からアノード及びカソード分極曲線を別々の試料を使って測定した。紫外線照射は分極測定中も行った。さびた鉄鋼では,紫外線照射により腐食は40数%促進され,さびの量が増えるとさびの光触媒効果が大きくなると考えられる。紫外線照射と照射なしのアノード分極曲線から両者の差を求め,これを光応答電流とすると,7日間腐食試料で0mVまで分極すると0.3A/cm^2の光応答電流が流れることが明らかになった。さびのX線解析の結果,すべての試料でγ-FeOOHとFe_2O_3が生成していることが確認された。しかし,これら2種類のさびが光触媒としてどのように作用するのかは,本研究では明確ではない。
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