研究概要 |
本年度は主として電解析出法によりアモルファスNi-W合金を作製し,これに熱処理を施すことによりナノ結晶化する過程を調べた.また,本研究過程において,従来から困難と思われてきた電解析出法による高延性アモルファスNi-W合金材料(破断することなく180度密着曲げが可能な試料)の作製技術を確立することができた. 使用した電解浴はNiSO46H2O:0.06mol/l,Na3C6H5072H2O:0.5mol/l,Na2WO42H2O:0.014mol/l,NH4Cl:0.5mol/l,NaBr:0.15mol/lからなり,電解電流密度および電解浴温度を変化させた.電解電流密度を20A/m^2とした時,電解浴温度が363Kから333Kへと低下すると,Ni-W合金中のW含有量は約25から18at.%へと低下し,約20at.%Wを境にアモルファス構造からナノ結晶構造へと変化した.348Kで作製したアモルファスNi-22at.%W合金は完全密着曲げ変形後も塑性変形を生じて破断しなかった.これらアモルファスNi-W合金を熱処理を加えることによりナノ結晶化させ,結晶粒径と硬度との関係を検討した.平均結晶粒径が10nm以上の領域ではホールペッチの関係により結晶粒の微細化にともなう硬化が観察されたが,10nm以下の領域では逆に軟化する傾向が観察された.高分解TEM観察の結果,結晶粒径が10nm以下のとき約1-2nmの広い幅を持つ粒界が観察され,結晶粒の超微細化とともに粒界の幅が増加する傾向があると考えられた.
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