研究概要 |
昨年までの研究において,著者らはビッカース硬度が650以上の高硬度(硬質ガラスに匹敵する硬度)を有し,同時に完全密着曲げ状態でも破断しない高延性のアモルファスNi-W合金を電解析出法により作製することに成功した.本年はNi-W系と同様にFe-W系合金においても高硬度・高延性材料が作製できることを明らかにした.これら高硬度・高延性の電解析出合金の引張試験を実施した. Ni-W系およびFe-W系電解析出合金は,アモルファスもしくはナノ結晶構造を有し,高硬度,高延性,高熱安定性等の優れた特性を示した.これら両合金系において,W含有量がそれぞれ17〜23at.%および25〜29at.%の範囲内で,ビッカース硬度がそれぞれHV=550〜685およびHV=835〜878を示し,完全密着曲げ状態でも破断しない高延性材料の作製が可能であった.アモルファス相の結晶化温度はNi-W系で980K付近,Fe-W系で1100K付近となり,高い熱安定性を示すことがわかった.両電解析出合金において,アモルファス構造よりも結晶粒サイズが10nm程度のナノ結晶構造を有する場合の方が,硬度は大きく上昇した.例えば,Fe-W合金では,W含有量を低下させ,アモルファス度を低下させていくと,合金のビッカース硬度はHV=600から900まで上昇し,かつ塑性変形能を維持していた. 両電解めっき膜の引張試験を実施したところ,両合金とも引張破断強度は400MPa以上で,引張破断歪みは1.5%以上を示した.引張破断後の破面には多数の細かい凹凸が観察され,クラックの進行が困難であったことを示していた. これら合金は,高寿命・高信頼性を有するマイクロ部品を作製するための新しい構造材料として期待される.
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