研究概要 |
ナノ結晶材料は結晶粒径の微細化に伴う粒界体積率の増加によって,優れた強度および靱性を発現することを期待されている.しかしながら,これまで開発されてきたナノ結晶材料は結晶粒径微細化に伴って非常に脆くなる.一方,電解析出法はナノ結晶材料の作製が容易であり,試料作製後の成形プロセスを必要としないが、作製された硬質合金は激しい脆化状態を示す.本研究では電解析出法により高靱性を有するナノ結晶Ni系合金の作製条件を明らかにすることを目的とした.また熱処理による機械的性質の変化について調べるとともに,ナノ結晶材料の靱性に及ぼす結晶粒度依存性について検討した 電界析出法により作製したNi-W合金は,電界析出効率の非常に高い条件で高靭性を示した.高靭性Ni-20.7at.%W合金では,電析後の状態で最大引張破断強度は670MPaであったが,脱水素処理を行うことにより引張破断強度は大きく回復し,最大2333MPaに達した.高靭性を示したNi-20.7at.%WおよびNi-12.3at.%W合金に熱処理を行うことによって,結晶粒径と機械的性質の関係について調べた.その結果ビッカース硬さは両合金とも約10nmまで結晶粒径の増大に伴って増加し,Ni-20.7at.%W合金でHV910,Ni-12.3at.%W合金でHV820にまで硬化した.また,靭性は結晶粒経が約10nm以下の領域で高い値を示し,完全密着曲げ状態においても塑性変形を生じて破断しないが、10nm以上になると激しい脆化状態となった.これらの結果からナノ結晶材料が脆化を起こす臨界と結晶粒した径を,ナノ結晶粒子が最密に充填し,塑性変形が最密に充填した粒界面に沿って生じる仮定モデルを作成することによって検討した.
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