研究概要 |
マイクロ・スパッタリング技術には,基板面をエッチングする機能と,基板上に薄膜を形成する機能を併有している特色がある.これらの機能の選択は,陽極と基板との相対位置を変えることで任意に行える.この特色を活かして,基板面をエッチングして,新生面を創出しながら,その面上に薄膜形成を連続して行い,付着力の大きな,かつ耐摩耗生に優れた薄膜を形成する研究を計画した. 本年度は,陰極としてC(グラファイト)を用いてカーボン系薄膜を,Siを用いてシリコン系薄膜の形成をマイクロ・スパッタリング技術によってまず始めに基本を知るためガラス基板上に蒸着を行った.作成条件は,到達圧力2×10^<-3>Pa以下,平衡ガス圧力4×10^<-2>Pa,印加電圧 1.1kV,放電電流 15mA,動作時間20分で行った.放電ガスには,アルゴン,窒素,メタンを使用した.作成された薄膜は,いずれも3mmφのスポット径で,アルゴンガスの場合には,カーボン系薄膜の色は茶色で,薄膜の形成速度は 70Å/分,シリコン系薄膜の色は橙色で,速度は200Å/分であった.薄膜のガラス基板のへの付着力は,シリコン系薄膜の方が優れており,剥離強度を通常のセロハンテープによるテープテスト,スポンジによる洗浄テスト20%に希釈した塩酸を用いた耐蝕テスト(80℃,5日間)の各々のテストを行った.何れの場合においても,薄膜の剥離を認めることはなかった. 現在,薄膜の分析は,XRD(X線回析)法や,AES(オージェ分析)法や,ラマン(ラマン分光)法等で,構造解析を進めている.ここまでの結果については,平成10年3月末の応用物理学会関係の連合講演会で発表を行う. 今後は,これらの結果を基にして,耐摩耗性に優れた薄膜(炭化物や窒化物薄膜)形成を進め,さらに基板をガリウムヒソ,シリコン基板等へスッパッタリングを行い,次段階として,エッチングと薄膜形成を連続して行った場合の付着力,耐摩耗性の違いの検討を進めていく.
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