世界的な良質鉄鉱石資源の枯渇に伴って、輸入鉱石中のアルミナや結晶水の含有量は最近増加の一途を辿っており、高アルミナ鉱石の使用に伴う高炉操業上の問題が既に顕在化している。一方、高炉下部における焼結鉱の被還元性は、還元過程で焼結鉱中に生成する酸化鉄系初期融液の性状に大きく影響されることが知られているが、初期融液の挙動とアルミナの関係については未だ不明である。本研究は、高炉下部における初期融液の生成、滴下、還元挙動とそれに及ぼす脈石成分の影響を系統的に解明し、高炉における高アルミナ鉱石の使用技術を確立するための基礎資料を得ることを目的とするものである。初年度である平成9年度においては、高炉における初期融液の挙動をシミュレートすることを目的に、鉄製、またはCaOやMgO製の漏斗からの酸化鉄系合成スラグの滴下実験を行った。Fe_tとCaO-Al_2O_3-SiO_2系元系内にある4つの安定な化合物(2CaO・SiO_2、CaO・SiO_2、2CaO・SiO_2・Al_2O_3、CaO・2SiO_2・Al_2O_3)を結んでできる5つの擬3元系を対象にし、漏斗からの滴下温度、滴下スラグ組成、共存固体酸化物相、及び融液の漏斗上へのホールドアップ率を調べ、スラグ組成との関係について検討した。その結果、漏斗からのスラグ融体の滴下が生じる温度は、スラグの融点よりかなり低く、ほぼ共晶温度と一致することが明らかとなった。また、スラグのホールドアップ率は、酸化鉄濃度が一定の条件では、塩基度とアルミナ濃度の影響をかなり大きく受け、特に低い塩基度でアルミナ濃度が高くなるとホールドアップ率は顕著に大きくなる傾向が認められた。また同時にスラグ融体の表面張力測定を行い、ホールドアップ挙動がスラグの濡れでほぼ説明できることが分かった。平成10年度は、より広い酸化鉄濃度範囲で同様の実験を行って初期融液の挙動に及ぼす組成の影響を明らかにする予定である。
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