研究概要 |
残留抵抗比(RRR)は高純度金属の相対的な純度評価法として優れているが、高純度金属に残存する微量不純物元素の種類や濃度と1:1に対応しないという問題点がある。よって、RRRと微量不純物との定量的な関係を明らかにしておく必要がある。本年度は、純度が異なる高純度鉄(99.9〜99.9999%以上)を作製し、鉄のRRR_Hと微量不純物・濃度との関係を検討した。 (1) 高純度鉄の作製:純度約99.9%の電解鉄を原料に、溶媒抽出、イオン交換、溶媒抽出+イオン交換等の精製法を種々組み合わせ、99.99〜99.9999%以上の純度の異なる高純度鉄を得た。 (2) RRR_H測定:各高純度鉄から線状試料(約0.5mmφx80mmL)を作製し、水素焼鈍後RRR_Hを測定。RRR_Hはほぼ純度に対応し、100〜5000の値が得られた。 (3) 微量不純物分析:RRR_Hを測定した高純度鉄のGDMS分析を行い、約40元素の微量不純物の分析値を得た。 (4) RRR_H値と微量不純物濃度との関係:Arajsによる不純物17元素1at%当たりの鉄の比抵抗に及ぼす寄与率を用い、また寄与率が不明な不純物元素は1at%当たり2x10^<-8>Ωm(Abikoらによる)を用い、各濃度から試算した結果、ほぼ対応するRRR_Hが得られた。なお、若干の差違が生じたが、これはリンの寄与率が大きいことに起因した。 (5) リン濃度の寄与率:鉄の比抵抗に対するリンの寄与率を求めた結果、1at%当たり5.9x10^<-8>Ωmが得られた。この値はSi,Nと同程度で、他の金属不純物より3倍ほど大きく、よって高純度の鉄でもSi,N,Pが微量残存すれば、高いRRR_H値は得られないことが示唆された。
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