鋼の凝固時に凝固殻に気泡や介在物が補足される機構および相変態の機構を明らかにすることは、超清浄鋼の製造、介在物の均一分散による鋼の特性の向上に重要である。鋼の結晶の固液界面に介在物が補足されるか、押し出されるかを共焦点走査型レーザー顕微鏡を用いてその場観察を行い、介在物が補足される場合の鋼の結晶の臨界凝固速度と介在物半径の間の関係を見出した。介在物が捕捉される場合には介在物に近接する鋼結晶が優先的に凝固し、捕捉することがわかった。これは鋼より熱伝導率の低い介在物が固液界面の前面に存在し、融液からの熱の供給が妨げられるためと考えられる。有限要素法による伝熱解析から介在物が熱流を阻害し、介在物に近接する鋼結晶が優先的に凝固することを確認した。介在物が補足される場合の鋼の結晶の臨界凝固速度と介在物半径の関係式に基づき、樹枝状晶が形成される時の樹間におけるアルミナ介在物の振る舞いを簡単なモデルにより理論的に検討した。固液共存領域が50Kの鋼が凝固する場合、冷却速度が1K/s以上のの時には直径が10μm以下のアルミナ粒子は固相に取り込まれず、樹間でのアルミナ粒子の数密度は大きくなっていく。一方、固液共存領域が5Kで、冷却速度が0.1K/sより大きい場合には、直径10μmのアルミナ粒子は固相に取り込まれる。また、固液界面における液相中の溶質濃境界層の中では、この濃度差に起因する力が粒子に作用し、固相へのアルミナ粒子の取り込みを容易にすると考えられる。 鋼のδ/γ変態を、高温で"その場"観察を行い以下の結果を得た。δ/γ異相境界における2面角を測定し、S濃度の影響を検討した。S濃度が高いほど界面自由エネルギーが低下することが分かった。また、δ相へのγ相の樹枝状の成長を観察し、その形状の不安定性について検討し、従来の樹枝状晶の成長理論を固相中においても適用できることが判明した。
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