本研究では、水溶液からは電析できない希土類およびその合金の薄膜を得る手段として室温溶融塩からの電析法を検討している。昨年度は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムを陽イオンとする溶融塩を合成し、希土類塩の溶解性および酸化還元挙動を調べた。 本年度はアンモニウム系室温溶融塩であるトリメチルヘキシルアンモニウム陽イオンのトリフルオロメタンスルホンイミド(TMHATf@@S22@@E2N)を新規に合成した。合成原料には臭化トリメチルヘキシルアンモニウム(TMHABr)およびリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTf@@S22@@E2N)を用い、水中で反応させて得られるTMHATf@@S22@@E2Nをジクロロメタンで抽出・洗浄したあと真空下150°Cで脱気・乾燥を行った。生成した溶融塩TMHATf@@S22@@E2Nは融点27゚Cで、5V以上の電位窓を有していた。Nd(Tf@@S22@@E2N)@@S23@@E2のTMHATf@@S22@@E2Nへの溶解度は0.1M以上であった。酸化還元挙動の検討も行ったが、ネオジムの酸化および還元によると明確な電流は観測されなかった。溶融塩の融点が比較的高く高粘度のため、反応が非常に遅いためと考えられた。そこで、より一般的な電析系に関しTMHATf@@S22@@E2N中での酸化還元挙動を調べ、基礎的知見を得ることにした。ここでは、水溶液中での酸化還元挙動に関してもよく研究されている銅について、溶融塩TMHATf@@S22@@E2N中での酸化還元挙動を調べた。銅塩としてCu(Tf@@S22@@E2N)@@S22@@E2を酸化銅(II)とLiTf@@S22@@E2Nを反応させて合成した。その結果、Cu(Tf@@S22@@E2N)@@S22@@E2を溶融塩に溶解し、カソード・アノードともに白金を用いた場合には銅電析は起こらなかったが、アノードに銅板を用いてアノード反応を銅の酸化溶解とすることで、銅電析を連続的に行うことができることが明らかとなった。 以上より、電解温度を若干上げ、アノードに希土類金属を使用して希土類の酸化溶解をアノード反応とすることで、希土類金属の連続的なカソード析出が可能になると考えられる。
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