CaO-SiO_2-Al_2O_3系およびNa_2O-CaO-SiO_2系スラグ中への窒素溶解度を、窒素源としてN_2ガスを用いた場合と窒化ケイ素セラミックスを用いた場合とで測定した。得られたデータは、従来より用いられているナイトライドキャパシティにより整理した。また、冷却後のスラグ試料のビッカース硬度およびXPSを測定した。以上の結果をもとに窒素源の違いによる窒素の溶解機構の差について検討した。 N_2ガス-スラグ平衡により得られた本系スラグのナイトライドキャパシティは、SiO_2濃度の増加とともに減少する傾向を示した。スラグ中の酸素イオンの量を示す指標となる光学的塩基度により得られた結果を整理したところ、光学的塩基度の増加とともにナイトライドキャパシティが増加したことから、本系スラグ中へのN_2ガスの溶解は、スラグ中の酸素イオンとN_2ガスの置換反応により生成したN^<3->イオンの溶解により進行すると推定された。一方、窒化ケイ素-スラグ平衡により得られたナイトライドキャパシティは、ガス-スラグ平衡の場合よりも2〜4桁程度大きい値を示した。本系スラグ中への窒化ケイ素の溶解は、窒化ケイ素の分解反応により生成したN_2ガスの溶解であると仮定して、改めてナイトライドキャパシティの計算を行ったが、ガス-スラグ平衡の場合よりも小さい値を示し一致は見られなかった。これらのことから、スラグ中への窒化ケイ素の溶解機構はN_2ガスの場合と異なるものと推定された。 冷却後のスラグのビッカース硬度は、窒化ケイ素を溶解した後のスラグ試料で急激な増加が確認され、飽和窒素濃度が多いスラグほど硬度の増加が大きかった。このことから、窒化物の導入によりスラグの構造が強化されたものと推定された。 以上の結果より、スラグ中への窒素の溶解は、N_2ガスを用いた場合にはフリーのN^<3->イオンの形態で溶解が進行し、窒化ケイ素を用いた場合にはSi-N(orAl-N)結合を含むアニオンを形成し、このアニオンがスラグ中を拡散することにより溶解が進行するものと推定された。
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