研究概要 |
シリコン中で最も重要な不純物である酸素において,その室温における挙動は現在ある程度明らかとなっている.しかし,実際に単結晶製造プロセスを行う温度,すなわち融点近傍の高温におけるシリコン中酸素の諸物性に関しては,点欠陥の発生温度領域であるにもかかわらず,従来全く報告が行われていなかったといっても過言ではない.そこで,われわれの研究では,シリコン中に酸素原子を導入したシリコン-酸素のシステムを研究の対象とし分子動力学法を用いて動的解析を行った.まず,システムの温度を室温程度までを上昇させ,酸素原子の振動数を赤外吸収法による原子振動数と比較し,計算コードの健全性のチェックを行った.その結果,分子動力学計算により求めた酸素の局在モードの振動周波数は,約1000cm^<-1>であり実験値の1106cm^<-1>の値との誤差は約10%であることが確忍できた. さらに,このシステムの温度を融点以上に昇温することにより融液を作成し,シリコン融液中の酸素原子の拡散係数を推算した.その結果,シリコン中の酸素の拡散係数はシリコンとほぼ等しく,約2×10^<-4>cm^<-2>/secであることがわかった. 今後は,他の重要な欠陥である空孔を含む複合欠陥,すなわち空孔-酸素ペア-(V-Oペア-)における赤外吸収スペクトルの実験結果との比較を行い.コードの健全性を確認する.さらに,高温固体における点欠陥を含むシステム下での酸素原子の拡散過程についても検討を加える予定である.
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