研究概要 |
シリコン中の重要な格子欠陥の一つである酸素と原子空孔対,いわゆるV-Oペアーに焦点を当て,分子動力学計算により酸素の局在モードの振動周波数や欠陥周囲の格子歪み等の検討を行った.この数値計算の結果,約800cm^<-1>に酸素に起因する局在モードの振動数が得られ,実験値である830cm^<-1>の値と約4%の精度で一致することが確認できコードの健全性を確認できた.さらに,V-Oペアー周囲の格子歪みは,格子間酸素のみの格子歪みとほとんど同じであり,酸素原子の最近接原子であるシリコンの有無にほとんど関わらないことが明らかになった. 一定圧力一定温度の分子動力学計算のもとで,空孔や格子間原子の拡散のシミュレーションを行った.対象とする材料はシリコンであり,空孔や格子間原子の初期配置は任意に選択できるコードとした.このコードを用いて圧力下における空孔と格子間原子の拡散係数と活性化エネルギーを求めた.数値計算の結果,これらの圧力依存性は小さいことがわかった.さらに,固体と融液の体膨張率に関してもさらに検討を加えた.シリコンの完全結晶に空孔や格子間原子を挿入し、その拡散係数の温度および圧力依存性について検討を加えた。その結果以下の5点が明らかになった. 1. 空孔と格子間原子の拡散係数の圧力依存性は温度依存性に比較して小さい. 2. 空孔よりも格子間原子の場合のほうが格子変形量は大きい. 3. 空孔と格子間原子の拡散の活性化エネルギーは正の静水圧では圧力依存性が観測された. 4. 融液の密度の温度依存性は温度傾域にかかわらずほぼ一定であり,いわゆる密度異常は観測されなかった. 5. 融液と固体における圧縮率の負の圧力依存性を求めた結果,正の圧力依存性を外挿しても誤差は少ないことがわかった.
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