研究概要 |
1.一定圧力一定温度の分子動力学計算のもとで,空孔や格子間原子の拡散のシミュレーションを行った。対象とする材料はシリコンであり、空孔や格子間原子の初期配置は任意に選択できるコードとした.このコードを用いて圧力下における空孔と格子間原子の拡散係数と活性化エネルギーを求めた。数値計算の結果、これらの圧力依存性は小さいことがわかった。さらに、固体と融液の体膨張率に関してもさらに検討を加えた。本節では、点欠陥の拡散係数を分子動力学法により求めた。その結果、拡散係数の圧力依存性は非常に小さいことが明らかとなった。 2.シリコン中で最も重要な不純物である酸素原子を導入したシリコン-酸素のシステムを対象とし酸素原子の移動現象を分子動力学計算により検討した。分子動力学計算により求めた酸素の局在モードの振動周波数は,約1000cm^<-1>であり、実験値の1106cm^<-1>値との誤差は約10%であることが確認できた。このシステムの温度を融点以上に昇温することにより融液を作成し、シリコン融液中の酸素の拡散係数を推算した。その結果、シリコン中の酸素の拡散係数はシリコンとほぼ等しく、約2x10^<-4>cm^<-2>/secであることがわかった。 3.シリコン中の重要な格子欠陥の一つである酸素と原子空孔対、いわゆるV-Oペアーに焦点を当て、分子動力学計算により酸素の局在モードの振動周波数や欠陥周囲の格子歪み等の検討を行った。この数値計算の結果、約800cm^<-1>に酸素に起因する局在モードの振動数が得られ、実験値である830cm^<-1>の値と約4%の精度で一致することが確認できコードの健全性を確認できた。さらに、V-Oペアー周囲の格子歪みは、格子間酸素のみの格子歪みとほとんど同じであり、酸素原子の最近接原子であるシリコンの有無にほとんど関わらないことが明らかになった。
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