YSZ(イットリア安定化ジルコニア)は、固体酸化物型燃料電池用電解質として注目されている。本研究ではプラズマMOCVD装置によりYSZ固体電解質を作製し、反応プロセスの低温化、薄膜化を試みた。生成膜に対して組成分析、結晶構造評価を行い、さらにプラズマ印加が及ぼす影響を、熱CVDで作製した生成膜と比較することにより明らかにした。 Si(100)基板上に、Zr(t-OC_4H_9)_4及びY(C_<11>H_<19>O_2)_3を出発原料とした高周波誘導結合プラズマMOCVD装置によりYSZ薄膜を作製した。成膜条件は高周波電力13.56MHzで120W、全圧200Pa、基板温度623K、反応時間15minとし、原料のバブリング温度を変化させることにより生成膜組成制御を試みた。 XRFによる組成分析の結果、生成膜中のY濃度はY(C_<11>H_<19>O_2)_3原料濃度に比例して増加し、Y_2O_33〜12mol%の範囲で生成膜組成制御が可能であった。原料濃度のY(C_<11>H_<19>O_2)_3/Zr(t-OC_4H_9)_4比と生成膜中のY/Zr比との関係から、生成膜中にはYが取り込まれにくい結果となった。成膜速度は原料濃度に比例して増加したが、プラズマを印加することにより低下した。状態図によるとY_2O_3濃度が8mol%以下である固溶体は単斜晶と立方晶の混合相となる。本研究で作製した生成膜をXRDにより結晶構造評価を行ったところ、立方晶であり、単斜晶は現れなかった。SEMによる表面観察の結果、プラズマ印加により膜質は緻密で平滑なものとなった。また、FT-IRによる吸収スペクトル測定の結果、プラズマ印加により残留炭素が低減されたことが確認された。
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