YSZ(イットリア安定化ジルコニア)は固体酸化物燃料電池用電解質として有力視されているが、その内部抵抗が大きいために得られる電流密度が小さいという欠点がある。しかしながら電解質を薄膜化することによりこの内部抵抗は低減し、高出力の電流を得ることが理論上可能となる。本研究は、プラズマMOCVD法により、反応プロセスの低温化、薄膜化を目的とした研究である。Zr(t-OC_4H_9)_4及びY(C_<11>H_<19>O_2)_3を出発原料としたYSZ固体電解質薄膜を作製し、生成膜に関して評価を行った。生成膜は、原料蒸気圧を捉えることで組成制御を行い、XRFにより膜組成を測定した。Y固溶濃度変化の点から結晶構造、微視構造との相関を、SEM、XRDそして交流二端子法による導電率の測定から明らかにした。またプラズマ印加が及ぼす影響を、プラズマMOCVD及び、熱MOCVDで作製した生成膜を比較することで、微視構造変化、残留炭素低減化をSEM、FT-IRの測定から明らかにした。 初年度はプラズマMOCVD装置の設計、製作に取り掛かり、高周波誘導結合プラズマMOCVD装置を製作した。昨年度は、Y固溶量3.1〜5.1mol%の範囲で組成制御が可能となり、その結晶構造は単斜晶と立方晶の混合相を示した。Y固溶量の増加とともに導電率は増加したが、バルクの値と比べると二桁程度低い値を示した。本年度は、Y_2O_33〜12mol%の範囲で組成制御が可能となったが、原料比と生成膜中のY/Zr比から生成膜中にはYが取り込まれにくい結果となった。この組成の結晶構造は、状態図からの予測に反して全て立方晶構造を示した。SEMによる表面観察の結果、Y固溶濃度の増加、プラズマ印加により、膜質は緻密で平滑なものとなった。FT-IRによる吸収スペクトル測定の結果、プラズマ印加によりC-H結合に起因する残留炭素が低減されたことが確認された。
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