本研究では、臨界点近傍でのセルロース固体の構造変化について検討した。セルロース水スラリーを連続供給可能な流通式反応装置を用いて、温度250℃〜400℃、圧力33MPaの亜臨界及び超臨界中でのセルロース分解実験を行った。実験後、回収した固体成分の形状をXRD、SEMならびにIR測定を行ない、反応によるセルロースの構造変化を評価した。 温度250℃では、短時間ではほとんど反応せず形状変化もなかった。しかし長時間では固体分は黒くチャー化し、セルロースの熱分解炭化反応が加水分解と並行して進んでいることがわかった。355℃では固体分は仕込みセルロース同様、白色であった。また滞在時間を変化させた場合の液体生成物分布から、滞在時間の増加により熱分解生成物が増加し、加水分解生成物は二次分解が進行することがわかった。一方、400℃の超臨界領域では、セルロースは高速に分解し固体の残存は確認されなかった。 より詳細な検討を加えるため、温度250℃と355℃(亜臨界領域)で固体分のSEM、IR測定を行なったところ、250℃では、セルロース骨格を残しておらず、全く別物質に変化していることがわかった。355℃では、分子長は仕込みセルロースより小さいがセルロース骨格を有していた。これより加水分解反応において、セルロースは主として結晶外表面から反応することが示唆された。 また得られた液状生成物は透明の液であったが、30分〜数時間放置すると白色析出分が生成した。これはセルロースあるいは長鎖オリゴマーが反応場では溶解しており、それが析出したものと推察された。そこで処理後の再析出物のIR測定を行ないセルロースと比較した。その結果、同様の骨格を有することがわかった。析出量をみると、亜臨界水処理よりも超臨界水中で短時間処理をした場合に析出量は多いことが確認でき、超臨界水中への溶解の可能性が示唆された。
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