益々深刻化するプラスチック廃棄物の問題を解決する一方策として、自然分解性等の機能を有する高分子材料の利用が検討されている。このような高分子材料の製造プロセスの具現化及び最適化のためには、まず熱物性値等の基礎的データの蓄積が必要となる。このような背景のもと、本研究では上記機能を有する天然及び合成高分子複合化材料の熱物性値、特に熱伝導率を広範な条件下で測定すると共に、材料の構造と熱伝導率との相関を明らかにすることを目的とする。本年度は、以下の点について検討した。 1) 天然及び合成高分子複合化材料の合成 測定試料としてトウモロコシ澱粉とアクリル酸メチルのグラフトコポリマーであるstarch-graft-poly(methyl acrylate)を合成した。澱粉含有率は65±5%一定であり、IRスペクトルからPMAのグラフト化を確認した。 2) 高分子複合化材料の熱伝導率測定 昨年度製作した細線加熱比較法に基づく熱伝導率測定装置を使用し、1)で合成した試料の加熱(20〜80℃)、加圧(2〜8MPa)時における熱伝導率の測定を行った。結果として、温度の上昇に伴い熱伝導率は増加するが、その温度依存性は小さいことがわかった。また、一定含水率(35.0%)において、圧力が上昇すると熱伝導率は上昇した。これは圧力の上昇に伴い試料の密度が増加するためと考えられる。一方、圧力を一定(8MPa)としたときには、熱伝導率は含水率とともに大きくなった。これは、試料より水の熱伝導率が高いことによるだけではなく、含水率が低いとき(7.2%)には試料は粉体の圧縮成形体状であるが、含水率が高い場合(35.0%)には水の存在により樹脂状に形態が変化するためであると考えられる。
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