益々深刻化するプラスチック廃棄物の問題を解決する一方策として、自然分解性等の機能を有する高分子材料の利用が検討されている。このような高分子材料の製造プロセスの具現化及び最適化のためには、まず熱物性値等の基礎データの蓄積が必要となる。本研究では上記機能を有する天然及び合成高分子複合化材料の熱伝導率を広範な条件下で測定した。 1) 熱伝導率測定装置の作製 高温(〜150℃)、高圧(〜20MPa)条件下において高分子材料の熱伝導率を測定するために、細線加熱比較法に基づく熱伝導率測定装置を作製した。 2) 天然高分子の熱伝導率測定 天然高分子であるバレイショ澱粉ゲルの加熱(20〜80℃)、加圧(2〜10MPa)時の熱伝導率を測定した。結果として、温度、含水率の増加と共に熱伝導率は増加した。また、熱伝導率の圧力依存性に関しては、1MPaまでは圧力と共に増加するが、それ以上ではほぼ一定値を示した。これは、試料中に含まれる微細気泡によるものであり、高圧下で熱伝導率が一定値を示すのは、気泡が圧縮され消滅するためと考えられる。 3) 天然及び合成高分子複合化材料の熱伝導率測定 トウモロコシ澱粉とアクリル酸メチルのグラフトコポリマーであるstarch-graft-poly(methylacrylate)を測定対象とし、加熱(20〜80℃)、加圧(2〜8MPa)時における熱伝導率を測定した。結果として、温度の上昇に伴い熱伝導率は増加するが、その温度依存性は小さいことがわかった。また、一定含水率(35.0%)において、圧力が上昇すると熱伝導率は上昇した。この圧力依存性は、2)と同様の理由による。一方、圧力を一定(8MPa)としたときには、熱伝導率は含水率とともに大きくなった。これは、試料より水の熱伝導率が高いことによるだけではなく、含水率が低いとき(7.2%)には試料は粉体の圧縮成形体状であるが、含水率が高い場合(35.0%)には水の存在により樹脂状に形態が変化するためであると考えられる。
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