研究概要 |
親水性ポリマーであるポリエチレングリコール、デキストラン、ないし非イオン性界面活性剤Tritonの混合水溶液が自発的に相分離して形成する数種の水性二相系を用いて以下の検討を行った。先ず大腸菌や枯草菌が、熱・塩・変性剤を始めとする各種のストレス条件下で生産するシャペロニンGroEL,GroESや機能性ペプチドsurfactin,ないしβ一galactosidase,CABを始めとする各種細胞内酵素・タンパク質、可溶性タンパク質量、不溶性画分(凝集物)の生産量と、それらの細胞外への放出量、さらにはこれらの細胞内酵素の各種ストレス条件下における活性や濁度の動的解析法をも併用して、酵素の安定性や変性・失活速度、凝集速度、表面特性・相互作用(機能)解析を行い、これらの間の相関関係について定量的に検討した。次いで水性二相分配法や蛍光色素法・定常蛍光偏光解消法等を適用して、これら微生物・細胞・脂質二分子膜モデル細胞の表面特性・細胞膜透過性・流動性等の定量的評価を行い、熱ストレスやTriton・溶菌酵素による物理的・化学的・生物学的ストレスによる細胞膜の特性変化とその制御法を検討した。この結果、各種酵素・タンパク質により高次構造変化とそれに伴う表面特性変化、特に表面の一部に極在する疎水結合部位を表す局所的疎水性の変化が各種速度過程を規定する大きな要因であることを明らかにした。例えば、局所的疎水性が最大となる変性初期の中間体が、シャペロンGroEL,GroESや機能性ペプチドsurfactinとの相互作用過程や、細胞膜との相互作用過程・透過過程、凝集過程等において重要な役割を果たしていることを明らかにし、一連の国際会議で発表するとともに論文として投稿した。
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