従来金属イオンの分離・濃縮を行うことを目的に開発・研究が行われてきたW/O/W型エマルション(乳化液膜)を、微粒子材料の調製場として用いることを検討した。 1.高度にモルホロジー制御された希土類しゅう酸塩微粒子の調製 W/O/W型エマルション系の外水相中の希土類イオンを液膜相への抽出・内水相への逆抽出を通して輸送し、内水相のしゅう酸と反応させ、希土類しゅう酸塩微粒子を調製した。サブミクロンサイズ(直径0.2〜0.6ミクロン)のきれいな球形微粒子が得られたが、これらは20nm程度の粒径をもつ一次粒子が多数生成した後、凝集したものであった。液膜中のイオンの移動過程のモデル化とシミュレーションを行った結果、生成する粒子の粒径は希土類イオンの各内水相への分配、および内水相中に仕込まれたしゅう酸イオンの量によって決定されることが示され、このことは実験により確認された。計算より予測された粒径や粒径分布は実験値と良好に一致し、外水相への仕込み希土類イオン濃度や内水相径の制御により生成粒子径を制御できることを明らかにした。 2.炭酸カルシウム中空微粒子の調製 カルシウムイオンを外水相から内水相へと輸送させ、内水相で炭酸塩と反応させ炭酸カルシウム微粒子を調製した。反応後のW/Oエマルションの解乳方法として、冷凍凍結したのち室温で解凍するという冷凍解乳法という新規な手法を用いた。内水相径とほぼ同じ大きさ(ミクロンサイズ)の球形微粒子が得られたが、断面をSEM観察した結果、中空の粒子であることが示された。さらに、結晶形は通常水溶液系で得られるカルサイトではなく、一般に不安定なバテライトであった。これらより、エマルション系を反応場として用いることにより、生成粒子の粒径、モルホロジー、さらには結晶形をも制御できることが示され、新たな微粒子材料調製プロセスとして有効であることが明らかとなった。
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