研究概要 |
陽イオン界面活性剤としてオレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド(商品名 Ethoquad 0/12)を500-1000ppm水中に溶解し、モル比で1:1.5のサリチル酸ナトリウムを添加することにより、顕著な粘弾性を発現することを確認した。特に溶液の長時間緩和現象をレオメータにより測定し、緩和時定数が剪断速度の変化率の関数であることを明らかにした。この関係を使って粘弾性流体の乱流減衰モデルを提案し、スケールアップ則の検討を行った。その結果、モデル予測値は本研究で得た10〜50mmの管径の抵抗低減効果は勿論、他の研究者が得た80〜150mmの管径のデータをもよく説明できることが明らかになった。これより実用規模の地域冷暖房システムにおける大口径管(例として1,000mm)の抵抗低減効果を予測した。これらの結果は日本レオロジー学会誌及びRheolgica Actaに投稿し、現在印刷中である。 熱交換器における伝熱係数の低下が界面活性剤の添加により、抵抗低減効果と同時に起こるとプロセスの設計上問題になると予想される。超音波破砕機によって界面活性剤のミセル構造を破壊しその回復時定数を測定した。その結果、回復に要する時間は1秒程度であり、熱交換器の入り口でミセル構造を破壊してもすぐ回復するため伝熱係数の上昇を維持することが困難であることが明らかになった。そこで、管内面を加工した内部溝付き粗面管の抵抗低減効果を測定し、粗面管による抵抗の増大と界面活性剤による抵抗低減効果の複合系における総括の効果を評価することとした。この実験は現在進行中であり、平成10年度に結果を得る予定である。
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