研究概要 |
インターネットに代表される新しい情報、通信の革新は、電子機器の高効率化、省エネルギー化、小型化によって支えられている。そのために、集積回路の高品質化への要求が一段と高まっている。すなわち、集積回路の基板材料として多用されているシリコン単結晶棒は、近年のうちに直径14"から16"(40cm)へと巨大化しつつあり、原料融液を入れるルツボも数トンに達すると予想される。そのような状況においては、融液は乱流状態となり、単結晶引き上げを実施するためには、外部より磁場を印加することが必須とされ、各社そのノウハウを得るためにしのぎをけずっていると言われている。本研究においては、このような導電性融液に外部より回転磁場を印加した時の影響について定量的に把握することを目指して、解析、実験を行った。その基礎としての一様静止磁場や、自然対流についての研究も必要不可欠である。本研究においては、まず磁場のない場合、ある場合の立方体容器内の液体金属の自然対流を数値解析した。対流項の差分化において、高次風上近似を用いることにより、冷却面に平行で水平な磁場を印加することにより、Ra=10^5,Pr=0.025,Ha=50において磁場をかけない場合よりも少なくとも5%平均熱伝達率が増加することを見い出した。これは、ローレンツ力は流れを抑制する方向にしか働かないという従来の定説を破るものである(論文1)。ついで、円筒空間に入っている液体金属に外部より回転磁場を印加した場合の数値解析を行った。その結果無次元角速度Ω=10^3,10^4,Ha=0.01,0.1の組み合わせにおいて円筒半径0.58の位置に最大流速を持つ回転流が発生することが数値解析の結果得られ、本研究テーマの妥当性が裏付けられた(論文2)。 次に、実験的に回転磁場をモーターを使って行うことを種々試みたが、コイル自身の発熱ばかりが大きく、容器内のガリウムの回転は極めて微弱であった。これはほとんどの磁場が漏れてしまい、容器内ガリウムに適切に磁場回転が到達しない為であった。そこで2極コイルに逆に減らしたところ、ガリウムは見事に回転しはじめた。数値解析と同条件での検討までには至らなかったが、回転流を実験的に得ることに成功した。
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