|
結晶の形状は、各結晶面の成長速度の相対的差によって決まる。成長速度の遅い面が発達するのである。そこで、本研究では微量添加物によりアスパラギン酸結晶の特定な結晶面の成長を抑制して、形状を変えることを試みた。先ず、添加物の探索を試み、L-グルタミン、L-グルタミン酸およびL-アスパラギンを選んだ。次いで、これら添加物の成長速度に対する影響を調べた。いずれの添加物の場合も、結晶のC軸方向の成長速度が抑制された。抑制の強さは、L-グルタミン、L-グルタミンそしてL-アスパラギンの順であったが、前2者はほぼ同じ効果を示し、L-アスパラギンはそれらの半分の効果を示した。これらのデータを、我々の提案した理論を用いて解析した。理論では、結晶表面に吸着された添加物が結晶の成長ステップの前進を阻むことで成長を抑制すると仮定しているが、データ解析によれば、吸着活性点の間隔が添加物の種類に依存し、その結果成長速度が変化すると解釈された。この間隔の違いは、結晶構成物質のL-アスパラギン酸と添加物の間の構造化学的相互作用の差に起因すると考えられた。このようにして、結晶成長速度と添加物の化学的構造の関係が説明できた。以上のように、L-グルタミン、L-グルタミン酸およびL-アスパラギンの添加によりアスパラギン酸結晶のC軸方向の成長が抑制されることが明らかになったが、L-アスパラギン酸以外の結晶(硫酸カリウム、カリミョウバン結晶など)を対象とした添加物効果の実験も試み、理論的検討を行った。これらの添加物による成長の抑制効果が示され、形状の制御が可能性が示された。形状制御の実験的検証は、L-アスパラギン酸結晶ではなく、カリミョウバン結晶(添加物はビスマルクブラウンG)について試み、添加物による形状制御が可能であることが示された。現在、形状制御の実験は継続中であるが、今後も引き続き行って行く予定である。
|
