研究概要 |
リン酸エステル構造を有する高分子ゲル合成のための準備としてアルキル基構造の異なるリン酸ジエステルの合成を試み、希土類元素間の選択係数とアルキル基構造の関係を検討した。リン酸ジエステルは氷冷下でアルコールによる塩化ホスホニルのジエステル化反応と加水分解反応を利用して合成した。アルコールには直鎖炭化水素を有するオクタノール、フェニル基を有するノニルフェノール、シクロヘキシル基をもつシクロヘキサノールを用いた。合成されたリン酸ジエステルを塩酸、水酸化ナトリウム、シリカゲルカラムで精製し、フーリエ変換型赤外分光装置(本年度購入)や^<31>P-NMRを用いてリン酸ジエステルの存在を確認した。次にリン酸ジエステルをトルエンで0.1mol/dm^3に希釈し、700mg/dm^3のLa(III),Sm(III),Yb(III)を含む水溶液を接触させて、希土類元素の抽出実験を行った。その結果、フェノール、シクロヘキシル基など立体障害を有するアルキル基構造ほど、重希土類元素に対する高い選択性を有すること、重希土類元素に対する選択係数が直鎖アルキル基<ノニルフェニル基<シュクロヘキシル基の順であることが明らかになった。工業規模で利用あるいは利用が検討されているD2EHPA(ジ(2-エチルヘキシル)リン酸)やDHDECMP(dihexyl-N,N-diethylcarbamoylmethyl phosphonate)に比べて重希土元素に対する高い選択性が得られた。立体障害性を有するバルキーなアルキル基を有するリン酸ジエステルが重希土類元素に対してイオン認識性を有することが確認できた。現在、4-ビニルフェノールをアルコールとして、アルキル基の末端にビニルをもったリン酸ジエステルの合成を行っており、スチレン系ポリマーへのリン酸ジエステルの導入を試みている。
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