研究課題/領域番号 |
09650844
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増田 隆夫 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20165715)
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研究分担者 |
向井 紳 京都大学, 工学研究科, 助手 (70243045)
河瀬 元明 京都大学, 工学研究科, 助手 (60231271)
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キーワード | ゼオライト膜 / 触媒膜 / MFI型ゼオライト / 分子篩能 / 反応・分離 / 高度分離 / C1化学 / シラン接触分解 |
研究概要 |
ゼオライトは結晶性アルミノケイ酸塩であり、その一つであるMFI型ゼオライトはその結晶内にベンゼン環とほぼ同じ径の細孔を持つため、分子篩効果を示す。一般にはO.O数〜数ミクロンの粉末として合成されるが、膜として合成できれば高度分離や反応・分離同時プロセスへの応用が期待される。そこで、本研究では欠陥細孔の無い膜状のMFI型ゼオライトの開発と、その分離、反応への応用を目的として研究を実施した。平成9年度には円筒状セラミックスフィルター外表面に分子篩能を示すMFI型ゼオライト膜を合成することに成功し、キシレンとジエチルベンゼンそれぞれのパラ体とオルト体の透過速度比がそれぞれ3と7であることを確認した。さらに、水素とベンゼンの透過係数比は150もの値を得た。そこで、平成10年度は全く新しいシラン接触分解法を考案して膜の分離能を向上させることを試みた。 1)シラン接触分解法:細孔径制御は一般にTEOSを用いた熱CVDにより細孔入口を狭くする方法が採用される。この手法は制御が難しく、膜の細孔入口を均一に狭くすることは困難である。そこで、常圧下、容易に細孔径制御ができる手法を開発した。この方法はジメトキシシランとジエトキシシランをMFI型ゼオライト膜の酸点に選択的に化学吸着させ、それを昇温して分解させた。シランは酸点上でメタン等の低級炭化水素と不揮発性のシラン化合物を生成する。その後、空気中で処理することで酸点上にSiO@@S22@@E2を1molづつ析出させた。析出した場所は0.3nm程度の孔が残ることになる。この大きさは水素は透過できるが窒素等は拡散が困難となる。この全く新しい手法によりMFI型ゼオライト膜を処理した。得られた膜の酸点の強度分布を測定した結果、シラン接触分解処理により強酸点のみが低下しておりSiO@@S22@@E2が酸点に選択的に付着していることを実証した。また、シラン処理によりCO@@S22@@E2の限界吸着容積は若干低下するが、ベンゼンの限界吸着容積がほぼゼロになる。ついで、減圧下、水素とベンゼンの透過速度を気相で測定したところ水素はシラン接触分解処理前後で若干透過速度が低下するが、シラン処理によってベンゼンは予想されたように全く透過しない。また、常圧流通式膜透過装置を試作して387KでH@@S22@@E2/O@@S22@@E2、H@@S22@@E2/N@@S22@@E2、H@@S22@@E2/CO@@S22@@E2の系で透過実験を行った。その結果、分離係数はシラン処理前はKnudsen拡散から予測される値に近い3〜5の値であったものが、シラン接触分解処理したものは分離係数がおよそ100であり、この状態は水素のモル分率が数〜90%の範囲で観測された。この性能はPd膜を除く従来のいずれの膜にも見られない非常に高い性能である。この膜は高い分子篩能と触媒能を有するため今後、燃料電池、Cl化学の分野に分離膜および反応・分離膜として展開する予定である。
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