研究概要 |
本年度は、昨年度の知見を基に、主モノマーにN,N-ジエチルアクリルアミドを用いて様々な条件で多孔質感温性ゲルを合成し、内部構造の定量的評価、膨潤挙動の解析、および高濃度洗米廃水の脱水試験を行い、本研究で提案した多孔質感温性ゲルを用いた余剰活性スラッジの新規な脱水システム構築の可能性について検討した。 1. 多孔質構造の定量的評価:合成温度を高くすると多孔質化が進むことは昨年度定性的に明らかにしているが、本年度は種々の分子サイズの親水性高分子およびラテックスを用いて細孔径分布の測定を行い、合成温度と細孔径分布の関係を定量的に検討した。その結果、合成温度35〜40℃にかけて多孔質構造が著しく発達すること、合成温度が40℃以上になると、数百nm以上のマクロポアを持つ多孔質構造が形成されることを明らかにした。 2. 親水性高分子溶液中での膨潤挙動:ゲルの膨潤速度および平衡膨潤度はゲル中への高分子の取り込み量と密接に関係した。ゲルの合成条件と取り込み量の関係は上記の細孔径分布からほぼ推定可能となった。また、多孔質ゲルは剪断弾性係数が小さいために膨潤時に容易に変形するが、多孔質構造が十分発達したゲルは水の移動抵抗が小さいために逆に変形を伴わずに膨潤し、膨潤速度は均質ゲルと同様にゲルの大きさの2乗に反比例した。 3.高濃度洗米廃水の脱水試験:約70000ppmの高濃度の有機物を含む洗米廃水(初期含水率約93%)400mLを、合成温度50℃、合成径3.4mmのゲル約100個を用いて脱水試験を行った。50℃で収縮させたゲルを10℃で15〜30分間吸水させ、この操作を5回繰り返すと、含水率は約70%まで低下した。 4. 総括:多孔質ゲルの合成条件と内部構造の関係、これらと膨潤挙動との関係をそれぞれ定量的に検討した結果、ゲルの合成条件を選ぶと、本研究で提案した新規な脱水システム構築の可能性があることが明らかとなった。
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